執刀医への器械の手渡し、手術中の物品補充などを担当

命の最前線で働く

手術室で勤務する看護師は直接介助(器械出し)と間接介助(外回り)という2つの役割に分かれます。

どちらも重要な役割ですが、間接介助は薬剤の知識、患者さんの全身状態の把握、手術中の物品補充、麻酔科医との連携、術中無影灯の位置合わせなど豊富な知識が必要となります。

したがって、新人看護師はどちらかというと手術時間の短い直接介助から独り立ちするということが多いかもしれません。

まずは直接介助(器械出し)の役割を見てみましょう。医療ドラマで医師が「メス」と声をかけると、横からサッと手渡す場面を目にすることがありますが、直接介助の看護師の仕事は、まさにこれに当たります。

しかし、実際にはさらに多くの仕事があります。順番に説明しましょう。まず、手術で使用する器械や物品を準備することから開始します。手術には「術式」というものがあり、同じ病名では術式によって違う機械を準備する必要があります。

例えば、病名は胃がんとなっていても、術式が開腹(腹部を切開して直接患部を見ながら手術をすること)による胃全摘出手術の場合と、腹腔鏡(お腹の中を観察するため1センチほど皮膚を切開し、そこから内視鏡を挿入し、モニターを診ながら行う手術)による胃全摘出手術の場合では、使用する器械も物品も、大きく異なります。

そのため、担当となった手術の直接介助を行う看護師は、術式や年齢など事前の情報収集によって必要な機械や物品を準備します。時には業者に注文しなければならない物品もありますので、手術室内の在庫状況にも気を配る必要があります。

手術で使用する器械をセットし終わったら、必要な器械は滅菌(微生物や細菌を殺滅または除去するため高圧蒸気滅菌を行ったり、ガス滅菌をおこなったりすること)を行います。患者さんが手術室に入室してくると、ベッドの移動や体位固定を行うなどして、患者さんの側の手術に臨む準備をします。麻酔導入が開始になる前あたりで、手洗いといわれる自らの手指消毒を行い、手術用のガウンを着ます。手洗いを終えた医師の手袋装着を補助し、いよいよ手術が開始となります。

手術中は、手術内容に合った順序を考えて、適切に器械を医師に手渡します。言われたら渡すというだけでは、手術の進行を遅らせてしまうことにもなりかねません。直接介助の看護師が全体の進行状況を把握しながら麻酔科医や間接介助の看護師に状況を伝えたり、術野を確認しながら器械を手渡すことができれば、手術時間の短縮にも貢献できます。手術時間の短縮は、結果として患者さんの身体的侵襲(出血・痛み)を減らすとともに、家族の精神的負担を軽減することにもつながります。

手術中に使用している器械やガーゼ、小さな針など全ての物品の数を閉創の前に確認します。これは患者さんの体内に手術で私用した物品が残ってしまうことを防ぐためです。直接介助の看護師が確認を終えるまでは閉創は行わず、万が一、ガーゼの数が足りない党のことが起きれば、手術を受けている患者さんのレントゲン撮影を行い、体内に物品が残っていないかを調べます。手術が無事に終われば、最終的な器械の確認を行い、器械の洗浄をよび滅菌によって、次回もキチンと手術が行えるようにします。